TCFDの提言に基づく「気候変動リスク」

当社は、この度、自然災害リスクに内包されている気候変動リスクについて、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)※1の提言への賛同を表明しています。気候変動に真摯に向き合い、事業に影響する機会・リスクへの理解を深化させ、TCFD提言に基づく気候変動関連の積極的な情報開示に努めてまいります。

TCFD提言は、気候変動に伴うリスクと機会が財務を含む会社経営にどのような影響を及ぼすかを的確に把握すべく、4つの開示要素である「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」に沿って情報開示することを推奨しています。当社は、TCFD提言が求める4つの情報開示項目に基づいた情報開示の更なる拡充に取り組んでまいります。

[注]※1Task Force on Climate-related Financial Disclosures:2015年に金融安定理事会(FSB)により設立された、気候変動が事業に与えるリスクと機会の財務的影響に関する情報開示を企業に推奨する国際的イニシアチブ。

①ガバナンス

当社では気候変動・環境への対応を経営上の重要課題と認識しています。その諸課題については、代表取締役会長兼社長を最高責任者とするリスクマネジメント委員会が、社内各部署と連携し、具体的な対応方針を協議・決議します。リスクマネジメント委員会での協議・決議事項ついては少なくとも半年に1回、取締役会に上程または報告されます。取締役会は業務執行において協議・承認されたサステナビリティ推進に関する取り組み施策の進捗を監督し、少なくとも年に1回気候変動に関する議題を取り扱います。

また、代表取締役会長兼社長は、リスクマネジメント委員会の最高責任者として、気候変動課題を含む、外部環境や経営環境の変化に伴い発生が予想される様々な全社的リスクのマネジメントの最終的な責任を負っています。

サステナビリティ推進体制

サステナビリティ推進体制における会議体とその最高責任者、開催頻度及び役割

会議体および体制

最高責任者

開催頻度

役割

取締役会

代表取締役会長兼社長

毎月1回

経営方針や重要な経営事項を審議・決定する。また、業務執行において協議・承認されたサステナビリティ推進に関する取り組み施策の進捗を監督する。少なくとも年に1回気候変動に関する議題を取り扱う。

リスクマネジメント

委員会

代表取締役会長兼社長

半年に1回

気候変動課題を含む、外部環境や経営環境の変化に伴い発生が予想される様々な全社的リスクの特定・評価し、特に重要なリスクについては具体的な対応策を協議する。決議事項や報告事項については少なくとも半年に1回、取締役会に上程または報告する。

リスクマネジメント

委員会事務局

(経営企画部)

リスクマネジメント委員会運営に際しての事務局機能を担う。リスクマネジメントへの取り組みの全体計画などの枠組み立案、推進組織の運営、助言を行う。

②リスク管理

当社では、代表取締役会長兼社長を最高責任者とする「リスクマネジメント委員会」にてリスク管理を行っています。リスクマネジメント委員は、まず各部と協議の上で事業運営に影響を及ぼしうるリスクを抽出・特定し、続いてそのリスクの優先順付けをしたのち、特に重要なリスクに関しては具体的な対応方針を協議します。
リスクマネジメント委員会は協議・決議事項を、少なくとも半年に1回取締役会へ上程・報告します。気候変動関連リスクについても、リスクマネジメント委員会が全社的なリスク管理プロセスに統合して管理を行っています。

③戦略

当社では、TCFD提言に基づき、気候変動関連のリスク・機会の把握を目的にシナリオ分析を行いました。シナリオ分析では、国際エネルギー機関 (IEA) 等の科学的根拠等に基づき1.5°Cシナリオと4°Cシナリオを定義し、2030年(移行リスク)と2050年(物理リスク)時点で事業に影響を及ぼす可能性がある気候関連のリスクと機会の重要性を評価しました。

シナリオ群の定義

項目

1.5℃シナリオ

4℃シナリオ

対象範囲

海外連結子会社まで

対象年

移行リスク:2030年,物理リスク:2050年

主な参照先

移行面

IEA NZE*

IEA STEPS*

物理面

IPCC SSP1-1.9*

IPCC RCP8.5*

※IEA NZE(Net Zero Emissions by 2050 Scenario):IEAが示した世界のエネルギー部門が2050年までにCO2排出量をネットゼロにする道筋を示す規範的なシナリオ

※IEA STEPS(Stated Policies Scenario):IEAが示した各国政府が公表している政策を反映した保守的なシナリオ

※IPCC SSP1-1.9:IPCCの第6次評価報告書にて示した気温上昇 を約 1.5℃以下に抑える気候政策を導入することで、21 世紀半ばに CO2 排出が正味ゼロとなり、世界の平均気温が産業革命前に比べて 1.0~1.8℃(平均 1.4℃)に抑えるシナリオ

※IPCC RCP8.5:IPCCが第5次評価報告書にて示した21世紀末(2081~2100年)に世界の平均気温が産業革命前に比べて3.2~5.4°C(平均4.3°C)上昇するシナリオ

リスク機会の特定及び評価

当社は、2022年度より当社の海外連結子会社までを対象に気候変動に関連する移行・物理リスクを精査し、事業への影響度を評価しています。その結果、自社に関連のあるリスクとして「炭素価格」「プラスチック規制」「エネルギーミックス」「異常気象の激甚化」を特定しています。2023年度には、2022年度において影響度が大きいと評価したリスクを対象に定量的な分析に基づく再評価を行いました。その結果、各移行・物理リスクによる財務的な影響度は「小」であると評価しました。今後も自社に関連性のあるリスクの低減および気候変動によって生まれる事業機会の獲得については継続的に行っていきます。


[影響度]
大: 大規模な業務の停止
中: 中規模な業務の停止
小: 小規模な業務の停止

 

[世界観]
1.5℃の世界観 (移行リスクは2030年、物理リスクは2050年):
・炭素税の導入等、厳しい気候変動対策を実施し、抜本的な社会変革を達成
・CO2排出規制/プラスチック規制/気候関連開示義務の強化、EV補助金促進

 

4℃の世界観 (移行リスクは2030年、物理リスクは2050年):
・厳しい気候変動対策実施せず
・CO2排出規制/プラスチック規制/気候関連開示義務の強化なし

リスク機会一覧

影響度および発生可能性をもとに重要度の高い気候変動関連リスク・機会を特定しました。

リスク/機会

項目

事業インパクト

1.5℃

4℃

移行リスク

炭素価格

炭素税導入に伴い、自社におけるエネルギー消費に課税され、操業コストが増加する

小※1

小※1

移行リスク

プラスチック規制

プラスチック規制によって石油由来プラスチックではなくバイオ・再生可能プラスチックを利用する必要が発生し、調達コストが増加する

小※2

小※2

移行リスク

エネルギーミックス

エネルギーミックス(電源構成)の変化によって、電力価格が上昇し、操業コストが増加する(炭素税+再エネの比率が高まる)

小※3

小※3

物理リスク

異常気象の激甚化

異常気象の激甚化による、人工毛髪等の取引先の製造拠点被災の影響で、商品供給に支障が出る

小※4

小※4

物理リスク

異常気象の激甚化

異常気象の激甚化による、ウィッグの製造拠点被災の影響で、商品製造・供給に支障が出る

小※4

小※4

物理リスク

異常気象の激甚化

異常気象の激甚化による、配送拠点被災の影響で、在庫被害や商品供給への支障が出る

小※4

小※4

(財務影響評価の根拠)
※1 炭素価格による影響については2030年時点のScope1,2排出量に対して、1t-CO2あたりの炭素価格を乗じて試算。
※2 プラスチック規制による影響については2030年時点の人工毛髪購入量に対して、バイオ・再生プラスチック利用率および単価の上昇率を乗じて試算。
※3 エネルギーミックスによる影響については2030年時点の電力使用量に対して、エネルギーミックスの変化に伴う電力料金の変化率を乗じて試算。
※4 異常気象の激甚化による影響については調達先・製造拠点・配送拠点の浸水リスクを把握し、各拠点の営業停止に伴う想定被害額と洪水発生頻度を乗じて試算。各拠点の浸水リスクの評価については、国土交通省の浸水ナビ、世界資源研究所のAqueduct 3.0を使用。

対応策

気候変動によるリスクを低減しつつ、気候変動によって生まれる事業機会を獲得していきます。

項目

事業インパクト

対応策

炭素価格

炭素税導入に伴い、自社におけるエネルギー消費に課税され、操業コストが増加する

・店舗・事務所での省エネ設備の導入

・再生可能エネルギーへの切り替え

・EV車両の導入

・炭素税等の環境規制に関する情報収集・対策

プラスチック規制

プラスチック規制によって石油由来プラスチックではなくバイオ・再生可能プラスチックを利用する必要が発生し、調達コストが増加する

・プラスチック利用の削減

・新素材の開発

エネルギーミックス

エネルギーミックス(電源構成)の変化によって、電力価格が上昇し、操業コストが増加する(炭素税+再エネの比率が高まる)

・再エネ資源の推進による電力価格削減

・店舗・事務所での省エネ設備の導入

異常気象の激甚化

・異常気象の激甚化による、人工毛髪等の取引先の製造拠点被災の影響で、商品供給に支障が出る

・異常気象の激甚化による、ウィッグの製造拠点被災の影響で、商品製造・供給に支障が出る

・異常気象の激甚化による、配送拠点被災の影響で、在庫被害や商品供給への支障が出る

・生産拠点の複数化

・原材料の調達先の多様化

・製品在庫の確保

・損害保険への加入

・BCP(事業継続計画)整備による

 レジリエンス強化

④指標と目標

当社は、2021年度より気候変動関連リスク機会の評価指標として温室効果ガス排出量の算定を行なっております。2022年度からはScope1,2排出量に加え、Scope3排出量の算定を実施いたしました。また組織範囲を国内のみからグループ全体へと拡大しています。

算定の前提と算定方法

[組織範囲] グループ全体
[時間的範囲] 各社の会計期間に従う
[温室効果ガス] 7ガス

Scope 1,2排出量(tCO2eq)

実績

2021年度

2022年度

組織範囲

国内

国内

グループ全体

Scope1

223

256

442

Scope2

5,854

5,729

6,881

合計※1

6,076

5,984

7,324

(参考)ロケーション基準※2

5,890

5,706

6,859

※1:マーケット基準で算定。マーケット基準とは、電力会社やメニューごとの排出係数を用いる算定方法。また購入した証書による削減も算定に含む。
※2:ロケーション基準:国や地域の平均的な排出係数を用いる算定方法。

Scope 3排出量(tCO2eq)

実績

2022年度

Scope3合計

42,130

Cat1 購入した製品・サービス

33,683

Cat2 資本財

4,705

Cat3 Scope1,2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動

1,102

Cat4 輸送・配送(上流)

1,298

Cat5 事業から出る廃棄物

156

Cat6 出張

503

Cat7 雇用者の通勤

629

Cat12 販売した製品の廃棄

55

※Cat8,9,10,11,13,14,15については、事業との関連が薄い、もしくは関連がないため算定対象外としている

削減目標

当社では気候変動リスクを緩和するため、2021年度に当社単体を対象とする温室効果ガス削減目標を設定しました。2022年度より温室効果ガス排出量の算定対象範囲をグループ全体まで拡大したことを踏まえ、削減目標についてもグループ全体を対象とするよう見直し、2030年に2022年比で売上高あたりのScope1,2排出量を20%以上削減、2050年にカーボンニュートラルを達成するという目標を設定しました。目標達成に向け、省エネ活動や省エネ設備の導入・更新を推進し、再生可能エネルギーの導入も検討しています。

2022年度(基準年)

2030年度(目標)

2050年度(目標)

Scope1,2排出量(tCO2eq)

7,324

-

0

売上高(百万円)

43,209

-

-

売上高あたり(tCO2eq/百万円)

0.169

0.136

0

削減率(%)

-

20%

100%